第9章 好意と本音【期末試験】
保健室へと歩き始めながら、先ほどの事が頭に過る。
彼がクラスメイト同士で話す姿を見るのは初めてだった。でもそれ以上に、女子とあそこまで自然なやり取りをしているのが珍しくて、目が離せなかった。
でも、本当はそれだけじゃなかった。
二人が並んでいる姿を見た時に、『お似合い』だと思うのと同時に、胸が苦しかった。
途中でお茶子ちゃんが話しかけてくれたから、一瞬気持ちを逸らすことができたが‥‥それでも、あの場面が頭に焼き付いてた。
(‥‥はは、重症だなぁ、)
少し呆れ気味に心の中で笑う。
もし、轟くんが今の私を知ったら…どう思うのだろう。
諦めきれずにいつも気持ちが揺れまくっている自分を見たら、どう思われるのだろう。
(‥‥‥‥)
答えが見つからないまま、意気消沈したまま、保健室のドアを開く。
「‥‥あ、悪い。」
保健室に同時に保健室から出ようとする人とばたりと会った。
『‥‥心操くん、』
「ああ、アンタか、」
心操くんだった。さっきまで、筆記試験を一緒に受けていたから、保健室にいる事が意外だった。
『‥‥こんな所で、どうしたの?』
「俺はちょっと野暮用、…この後、面談があるから、休憩していたところ。」
『‥‥面談?』
「‥‥まあ、色々」
そういえば、この頃、休憩時間やその他の時間で教室からいなくなる事が増えている気がする。それと何か関連があるのかもしれない。
「‥‥それよりアンタは?」
『あ‥‥、ちょっと仮眠を、』
「‥‥顔色悪いな。」
『‥‥やっぱり、そう?‥‥皆にも、言われた』
「とりあえず、横になって休んだら?リカバリーガールには伝えとくから」
『え?、でも、』
「いいから、休めよ。‥‥俺もしばらくはここにいるし、」
『‥‥そっか、じゃあ…お願いします。』
そこまでしてもらうのには抵抗感があったが、有無を言わせない雰囲気だったので、仕方なくお願いした。
「‥‥カーテン閉めるぞ。」
『うん、ありがとう』
カーテンを閉めると、ベッドに横たわり、布団の温もりを感じていた。疲れが体を巡ってくるとあっという間に眠気を誘ってきた。
(…‥今は寝て忘れよう)
少しでもこの感情から解放されたかった。