第3章 環境の変化【過去編】
『‥‥綺麗』
桜がまるで心まで染み渡るほど美しかった。そう見つめていると、ふと左右の髪が白と赤で、綺麗な瞳の彼を思い出した。
『…焦凍くんは元気かな』
幼稚園の頃、彼が炎と氷の個性を見せてくれた記憶が蘇る。思わず綺麗で見とれていたっけ、懐かしいものだ。最後は傷つける形で終わってしまったけど、それでもあの頃の思い出は自分にとって大切な時間だった。
もしまた会えたら、ちゃんと謝りたい。そして、何でもいいから話がしたい。そう思わざるを得なかった。
そう思い更けながら通路を歩いていくと、度々同じ制服を纏っている人たちが見始めた。恐らく同じ学校なのだろう。黒い学ランとセーラ服が目立つ中、二色髪の後頭部が見え、思わず目を丸めた。
『嘘‥‥』
あのような髪は滅多にいない。特定の人物と断定し、その人を目掛けて走り出した。まさか、同じ中学なの?
『‥‥あの!』
その人にたどり着くと、思い切って声をかける。反応がないみたいだ。もし私の勘違いならそのまま素通りしてほしい。
『あの、焦凍くん!』
そう思い断定した人物の名前を叫ぶと、その人物は後ろを振り返った。
「‥‥?」
振り向いた彼の姿に思わず立ちすくむ。小さい頃の表情からは想像つかないほど落ち着いているものの、相変わらず容姿端麗な顔立ちで、綺麗なオッドアイも変わらぬままだった。やっぱり彼だった。
『‥‥いきなりごめんね。えっと、久しぶり、』
突然の再会に緊張して声が震えた。彼は何も言わず私が話すのを待っているようだった。その間も他の生徒たちの素通りしている音だけ聞こえていた。
『‥‥私のこと覚えてるかな?…あの時は、ごめんね、』
いざとなって話す内容は、やはりあの出来事の事だった。もしかしたら急な謝罪に、彼は戸惑うだけかもしれないけど‥‥理由は何であれ、気に触れてしまった事をきちんと謝罪したかった。
そう思って彼の顔を伺ったが、
「‥‥悪い、記憶にねぇ」
彼の返答に思わず、思わず固まってしまった。