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【ヒロアカ】幸せな恋の諦め方【轟焦凍】

第8章 距離感と興味【原作編(職場体験)】


 
 なんでアイツが病院に?そんな疑問が浮かび上がる。何か怪我でもしていたのだろうか、それにしては、彼女の容態は普通だった。彼女の関係者で病院通いの人がいるのかもしれない。


(‥‥アイツも大変なんだな、)


 もう少し近づこうとすると、

「父さんな、好きな人が出来たんだ。」
「‥‥…え?」

 横にいる男性がそんな話をしていた。思わず手に持っている携帯を落としそうになったが、そんな俺の気配に気づかず、二人は会話を続けていた。


(‥‥一体何の会話だ?)


 関係性から見るに親子関係なのは明らかだが、病院で話す内容にしては重い。しかも好きな人が出来たなんて、わざわざ自分の子供に言う話なんだろうか。他人の自分が聞いてもあまり気分のいい話ではなかった。

 当の本人は携帯を見ながら、彼の言葉に頷いている様子だった。表情は笑みを浮かべているが、その笑みには困惑と諦めが混じっているのが見て取れた。
 今まで見た事のない雰囲気の彼女を目の当たりにし、思わず立ち止まってしまった。


(‥‥‥‥)


 思えばアイツとは割と長い付き合いになるが、彼女のプライベートの事を俺はあまり知らない事に気づかされる。そのため二人の会話はこの先、気になる所ではある。ただこのまま聞いていいものかと悩んだ。

 思わず一歩後ずさると、誰かとぶつかる音がした。

「‥‥ごめんなさいね。目が悪いもんで、」
『‥‥すみません、』

 高齢の女性だった。入院服を着ているのを見ると、この病院で入院している人か、

「あら、テレビで見た事があるような‥‥もしかして、」
『‥‥‥‥』
「私としたことが、」

 恐らく体育祭で俺の顔を知ったのだろうが、生憎自分には初対面の人だ。どう反応すればいいのか分からなかった。

 そんな自分の心情を汲み取ってか、その人はそれ以上何も聞かず軽く会釈をしてそのまま素通りしていく。俺はその後ろ姿を遠目で見ていた。

 そしてその高齢の女性が、一条に近づこうとしているに気づいた。

「‥‥おばあちゃん、」
「帰るのかい?」
「はい、母さん。申し訳ないですが、」


(‥‥祖母だったのか、)


 病院に入院している祖母と、女性関係が怪しい父親、そしてどこか複雑そうな表情の一条。彼女らの関係性が実際どうなのか、謎だった。
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