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【ヒロアカ】幸せな恋の諦め方【轟焦凍】

第8章 距離感と興味【原作編(職場体験)】



 今までの事を考えると、正直ショックである事は隠せない。でも父の立場を考えると何も言えなかった。

 私が幼少期に離婚してから、ずっと休む暇もなく働いていて、その状態から5年以上が経とうとしているのだ。家族のために頑張ってきた父に、自分の私情を挟むのは酷な話だ。

 父にだって個人の幸せがあるはずなのに、


『…‥お父さんにとって幸せにしたいと思える相手に出会えたんだね。‥‥おめでとう、』
「‥‥沙耶、本当に、いいのか?」
『‥‥うん、』
「ありがとう」


 だから、そう言うしかなかった。


「お前にも後で正式に紹介するよ、彼女の事。」
『‥‥あ、そう、だね』


 父の顔を見ると晴れ晴れとした表情に変わっていた。


「話は変わるが、沙耶、学校生活は満喫してるか?」
『‥‥突然、どうしたの?、まあ、それなりに楽しいよ。』
「そうか‥‥それならいいんだ。」
『‥‥?』
「ずっと父さんやおばあちゃんに遠慮していただろう?」

 
 遠慮していた、なんて思った事はなかった。ただ、家族の為に何かしなければとずっと思っていた。無個性の自分のできる事なんてたかが知れてるけど‥‥


「沙耶、お前ももう高校生だ。俺たちに気を遣わず、自分がやりたい事をやればいい。」
『‥‥そ、そんな事ないよ!私は、』
「お前が悪いって言いたいんじゃないんだ。家族を大事にしたいというお前の気持ちは嬉しいよ。でも、前を進む時の枷になってほしくない。」
『…‥枷、』
「“母さん”の事、やっぱ気にしてるのか?」
『…‥!』


 怒ってるでもなく純粋にそう質問する父だったが、自分は内心動揺していた。心の底を覗いている気分だった。


 否定できないのが、少し怖かった。


「そうか、」


 一瞬悲し気な父の表情が映っていた。


『‥‥そういう、わけじゃ、』
「いや、いいんだ。お前の気持ちは出来るだけ汲んでやりたいんだが‥‥ただ、もうアイツはいない。それだけは理解してくれ、」

 一見冷たく言っている言葉だが、彼の言っている意味を理解した。恐らく私の状況を心配しているのだろう。


(…‥お母さんか、)
 

 父は再婚まで考えているのだろうか、そこまではわからないけど、その相手と会う時は恐らくそこも考慮して出会う事になるだろう。

 
 モヤっとした気持ちが消える事はなかった。


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