第3章 環境の変化【過去編】
母の行動を悟った父は、度々家に訪れては母と言い争いを続けた。その瞬間が地獄のような時間で、いくら二人の仲を取り繕うとしても一向に変わらず、むしろ悪化する一方だった。そうなるたび、我を忘れて部屋に閉じこもっていた。
「お前、あの子のことなんだと思ってんだ!」
「私が間違ってるっていいたいの?!」
それでも、二人の話が聞こえてくる。聞きたくないのに、耳に入ってくる批難の声に、思わず体が強張る。
(お願い…早く終わって)
耳を塞ぎ、ベットの中に潜り込んで、早く終わることを願う。ただ仲良く会話がしたいだけなのに、どうして喧嘩しないといけないのと、ずっとその原因を自問自答していた。それで一つの考えにたどり着く
(…私のせいなのかな)
そう考えると圧迫感が押し寄せられ、気持ちはどんどん沈んでいった。
(ごめんなさいごめんさい…)
無個性でごめんなさい。何もできなくてごめんなさい。罪悪感と共に意識が遠のいた。
しばらくして目覚めると、もう朝になっていた。父と母はどうなったのだろうか、心配と不安で自分の部屋を出ると、
二人とも会話せず離れている姿が見えた。どういう事かと様子を伺うと、母が家の荷物を片付けてまとめている姿が見えた。
子供の自分でも、何をしようとしているのかが想像がついた。
「沙耶、母さんとはしばらく離れて暮らそうと思うんだ」
父から決定的な言葉を投げかけられ、まるで今までの努力がすべて無意味に感じてしまった。母がもう笑っている姿が見れないのかと思うと、思わず母の衣服に縋りついた。
『そんな…嫌だよ…』
『私頑張って努力するから…行かないで…、お母さん』
ほぼ泣き崩れるかのように、せめてもの悪あがきでお願いした。
でも____
「……どいてくれる?」
冷めた表情でそう呟く瞬間、頭が真っ白になっていた。父が何か言ってるような気がしたが、何も聞こえなかった。
心に穴が空いたような虚しい気持ちだった。