第7章 振り出しと関係【日常編】
『あの時は悪かった。』
「え?」
『気遣って会いに来てたお前を振り払ったりして』
あの時はあれで精一杯だったとはいえ、もう少し言い方があったはずだ。だからその事について謝った。
「轟くんが…謝った…」
『おい、』
「ご、ごめん、意外すぎて…」
俺なりに真剣に謝罪したつもりだったのが、彼女は眼を丸くしていた。
「そんなの気にしなくていいよ…私が勝手に会いにいっただけだし‥‥轟くんが一歩進めたならいいよ、そんなの」
『…‥そうか、』
正直彼女のやさしさに甘えている気がしてならないが、その答えはありがたかった。
『体育祭で緑谷と戦った後、色々考えた。これからどうするべきなのか』
「それで轟くんのお母さんに会ったんだね。」
『ああ、過去の出来事すべてが解決できるわけじゃねぇが、今解決できる事ならば清算すべきだと思った。』
そして持ってきた例の手紙を彼女に渡した。
「…えっと、これは…」
『‥‥覚えはないか?』
彼女はゆっくり中身を確認して、しばらく考えては納得がいったかのようにこちらへ視線を合わせた。
「あ!確か轟くんがお休みしてた時に送ったもの、で…」
思わず言葉が出ないようで、何かを懐かしむかのように目を細めていた。
「まだ残ってたんだね‥‥これ、」
『…‥過去の持ち物を調べた時に見つけた。』
「…そっか、ありがとう。大切に持っていてくれて、」
そういいながらやさしく笑う彼女の表情に、なぜか懐かしさを感じた。体育祭での記憶の少女のような‥‥
(…‥懐かしい、か、)
感覚としてそう思えるということは‥‥やはり、そうなのか。
「それにしてもどうしてこの手紙を今…、『‥‥お前は、』
「……?」
俺の考えとは裏腹に、彼女は何も知らないままこちらを見ている。
『‥‥お前の目には俺はどう映る?』
「‥‥え?」
『お前が言ってくれた【本物】のヒーローになれてるか?』
お前はあの時言った言葉を覚えているだろうか、
「‥‥轟くん、」
俺の言葉に何となく察したのだろうか、彼女の驚きの表情を見て自分の考えが確信に変わった。
お前があの少女だったんだな、