第7章 振り出しと関係【日常編】
姉さんは大きい紙箱をもいくつか持ってきて俺に見せてくれた。
「懐かしいね。ふふ」
幼稚園に来ていた制服やら当時持っていたおもちゃなどが入っていた。次の紙袋を開いた時、その中には多数の書類等が集められており、少し大きめの封筒が目に映った。
『‥‥なんだ、これ』
「ああ、焦凍宛ての手紙ね。」
『俺宛て?』
「丁度あの事があって一週間ぐらい幼稚園休んでたでしょ?あなたが心配だからという事で手紙をくれたらしいの。」
『‥‥』
「幼稚園の先生から預かったものを届けようとしたんだけど、焦凍それどころじゃなかったから受け取らなくて‥‥仕方ないから保管して置いたの。」
封筒の中を開くと、薄いピンク色のポストカードが入っていた。すべてひらがなで書いてあった。ひらがなとはいえ、字は一言一句丁寧に書かれていた。
しょうとくんへ
おやすみするってききました。
ゆっくりやすんで、またげんきになったとどろきくんにあいたいです。またあおうね
さや より
(‥‥さ、や)
この手紙を書いた張本人か、
「焦凍この頃のこと覚えてる?」
『‥‥‥いや、正直あまり覚えてねぇ』
「あれ?「さや」って…もしかして沙耶ちゃん?中学の時、焦凍と同じクラスだった‥‥」
そういえばアイツも「さや」という名前だった。
(‥‥‥‥アイツが送ったのか、)
思えば中学で会った際、彼女は俺を知っているようだった。その時は全く記憶にない事からその話題から遠ざかったが、この頃から俺と知り合いだったとしたら、忘れていたとはいえ悪い事をした。
「そっか…この頃から仲良くしてくれてたんだね」
『‥‥‥‥』
心配する程の仲だったのは間違いない。この手紙からも十分に伝わってきた。だからこそ自分の中で一つの可能性が浮かび上がる。
――だってわたしをたすけた時のしょうとくんは、ほんもののヒーローだったもん
(‥‥あの記憶は、)
『…‥姉さん、悪い。ちょっと借りる』
「え?いいけど…どうしたの?」
『‥‥‥少し用事ができた。』
その手紙を手に持ち、自分の部屋へ向かい、机に置いてあった携帯を取り出した。中学生の頃連絡先を交換して以来一度もかけたことのない相手に電話をかけた。
「…‥もし、もし?」
教えてくれ、あれはお前なのかを、