第7章 振り出しと関係【日常編】
※轟視点
体育祭後、俺は前に進むためにお母さんと直接会う事を決意した。
「焦凍どこ行くの?」
『病院』
「急にどした?ていうか焦凍それお父さんに言わなくていいの?何で今更お母さんに会いに行く気になったの」
『行ってくる』
物珍しそうに聞いてくる姉さんだったが、詳しい事はお母さんと会ってからにする。
あの日以来、自分の存在がお母さんを追いつめてしまうから会わなかった。だから俺がこの身体で全力で再びヒーローを目指すには、理想のヒーローになるには会って話を、たくさん話をしないといけなかった。
深呼吸をしながら、病室の門を開く。
『お母さん』
長年会っていなかったお母さんがこちらへ振り向いた。ずっと向き合えなかった人との対面だ。正直緊張しないというなら嘘になる。しかし俺には必要なことだ。
たとえ望まれてなくたって救け出す。それが俺のスタートラインだとそう思ったからだ。
そして、色んな話をお母さんと話した。彼女は泣いて謝り驚くほどあっさりと笑って赦してくれた。俺が何にも捉われずつき進むことが幸せであり救いになると言ってくれた。
まさか好意的に受け止めてくれるとは思っていなかったため、思わず唖然としてしまった。でもおかげで俺は迷いなく前に進むことができそうな気がした。
後は‥‥
俺はその後家に帰り、冬美姉さんと詳しい事を話した。体育祭での心境の変化、それによる母への対面。彼女は疑うことなく真面目に俺の話を聞いてくれた。
「そっか、焦凍は焦凍でそんな事があったんだね」
『ああ、』
「嬉しいよ。そういう風に思ってくれるなんて、」
『‥‥姉さん泣いてるのか。』
「違う違う!これは嬉し涙!」
彼女は慌ててそういうと、俺はそこでようやく本題を切り出した。
『それで、姉さんに聞きたいことがあるんだが、幼稚園の時のものってまだ保管してあるのか?』
「幼稚園の頃の…?またどうして?」
『確認したいことがある。』
「そうなのね、ちょっと待って…奥の部屋に閉まってあると思うから持ってくるよ。」
『頼む。』
彼女が席を外す間、俺は一人考えていた。記憶の少女のことについて
(これで思い出せばいいんだが、)
幼稚園に通っていた頃の記憶は残念ながら母との出来事もあって記憶があやふやだった。これは俺が前に進むため必要な事だった。