第7章 振り出しと関係【日常編】
「親父の…力を…」
「君の!力じゃないか!!」
その言葉を聞いた瞬間、忘れていたものが蘇ったかのように、母の言葉を思い出した。
――いいのよお前は。血に囚われることなんかないなりたい自分に…
そして、記憶の断片を探る中で、ある少女の言葉と笑顔が頭を遮った。
――だってわたしをたすけた時のしょうとくんは、ほんもののヒーローだったもん
今は誰だったか覚えていない。でも確かに印象に残っていた。
シンプルな言葉だったけど、小さい頃の俺は個性関係なしに「俺自身」をヒーローみたいだって言ってくれた事が嬉しかった。
しかし個性訓練が激化するにつれ、母は病院に隔離されてしまってからは、憎しみに囚われて、母の言葉とその少女の言葉も忘れてしまったのだ。
思い出したからには、俺は清算しないといけない。母との事も、そして、
その少女との事も、
でもどうしてだろう。俺はその少女とずっと一緒にいたような気がする。
なあ、お前は…
その疑問が解ける前に記憶はそこで終わってしまった。