• テキストサイズ

【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第3章 3分の1でも選ぶとは限らない



 数学的には三分の一かもしれないけど、私がその一を選ぶかは私次第でしょう。水田さんはそう言いながらアイスティーの氷をストローでぐるぐると回す。その口実に俺は妙に納得してしまった。今考えれば結局、毎回、いつも俺が考えて想定していた過程は通っても、予想していた結果には水田さんはさせてはくれない。ストレートを打って来ると思って、止めるつもりでブロックを飛んだにも関わらず、フェイクセットで一点もぎ取られるようなそんな気分だ。結果、三つとも俺の手元に残った。嗚呼、これが得点だったら本当によかったのに。
 まぁ、妹にあげればいいかとこの件はすぐに自己解決して、現実逃避するようにブレザーへサンプルを突っ込んだ。結局、水田さんがわざわざショッピングモールまで来て買ったのは百均のヘアゴムだけだった。
 たわいもない会話が続いて料理が届くと、時々会話を交わしながら、「おいしい」と嬉しそうに呟きながらパスタを口に運ぶ。

(パスタ、好きなのかな)

 考え事をしていると、いつの間にか付いていた手のソースを水田さんが視線で差しながら、横からスッと紙ナプキンを差し出し、手に付いたソースを拭った。
 そう言えば、弟いるんだっけ。他に下に兄妹とかいるんだろうか。
 先に突っ走るところとか、ハンカチとかティッシュとか、なんかいろいろ持ってるところとか。何気に持ち歩いている荷物が多いところとか、この前なんか教室に虫が入って来た時なんて、窓際の女子が騒いでるのに他人事のようにシャーシ芯詰め替えてたし。あとAB型っぽい、A型はないな。変なところとかあるし。...まぁ、さすがに本人には言わないけど。
 会話がなくなった頃、テーブルの横に置いていたスマホに通知が来る。妹からだ。通知に気づいた水田さんの身体が、少しだけ横にズレて俺のスマホを覗き込む。

「誰? 彼女?」
「妹」

 横でガチンッと、まだパスタが巻きついたままのフォークが皿の上に落ちる。驚いて隣を見ると、眉間に皺を寄せてまるで軽蔑しているような目で俺のことを見つめる。

/ 89ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp