【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第3章 3分の1でも選ぶとは限らない
「一人っ子だと思ってた」
どこか覚えのある皮肉なセリフに思わずフッと笑った。「そういえば、プリキュアネタ通じてた......」と今度は口元を押さえながら呟く水田さんに「そこ引っかかる?」と突っ込んだ。え、じゃあプリキュア見てたの? と聞かれてすぐに妹の影響で、と前言撤回した。
かなり衝撃を受けていたようでその後も、ソワソワと「そうだったんだ...」と思ってたより衝撃を受けている様子で、時々まるで明日世界が終わるとするなら何する? という質問に真剣に考えているのと同じくらい頭を抱え込んでいた。
「私さぁ、ずっと角名くんのこと......わがままな一人っ子だと思ってた」
「思ってたよりハッキリ悪口なのやめてくれる?」
頭を悩ませて、やっと紡ぎだした言葉がそれかよ。「お兄さんなんだね......」と、再び困惑と同情を含ませた発言に「なんだよ」と突っ込むが「いいや?」とパスタを巻き直して食べ始めた。
食べ終わってからしばらく、水田さんの弟と俺の妹の話をした後「ついて来てくれたから奢ってあげる」という水田さんに俺は言われた通り大人しく奢ってもらった。女に奢られるなんて初めてだ。自然と罪悪感はなかった。むしろラッキーと思ったくらい。代わりに意味もなくレシートをくれた。
食事を済ませて少しだけ暗くなった頃、来た道を戻り最寄りへ向かう。日は下りたけど、まだ少し蒸し暑い。室内との温度差で立ち止まったら汗がドッと汗が吹き出してきそうな、そんな感じだ。
「チューペット食いたくなってきたなぁ」
「また?」
唐突にそう呟くと、チューペットはもう食べたからパピコンがいい! と言い張る水田さん。ああそこ? と、思わず突っ込んだ。もう食べたくないとか言うと思った。ついでに食べてあげるから奢りね、と条件付きの口頭契約に俺は承諾した。それなのに早々コンビニで新作のアイスにつられている水田さんのスクバをコンビニを出るまでの間握りしめ、後戻りできないように背中を押しながらコンビニを出た。