【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第3章 3分の1でも選ぶとは限らない
「お腹空いてる? なんか食べていい?」
液晶のエリアマップを覗き込みながら水田さんが俺の方へ振り返った。俺の答えを聞く前に、エリアマップの店に指先が一か所のカフェをビシビシと差している。俺は言葉を交わすこともなく、上の階を指差してからエスカレーターへ向かうとそれに続き水田さんも付いてくる。エスカレーター前で配られている化粧品サンプルらしきものを無視して、上の階へと上がった。
水田さんが行きたがっていたカフェはそこそこ人気で、早めに空きができたカウンター席前に二人で座る。「ここ食べたかったんだよね〜」とメニューを見ながらはにかんだ。「角名くん何食べる?」と問いかけられて、水田さんと同じ期間限定のパスタとアイスティーを二つずつ注文した。先にアイスティーを受け取って胸を膨らませながら料理を待っている途中、俺は鞄から水田さんが受け取らなかった流れ弾の化粧品サンプルを三つ差し出すと「?、なにそれ」と他人事のように視線を向けられる。
「お前が受け取らなかったから代わりに俺に受け取らされたの」
「流れ弾か~ドンマイだね~」
そう吐き捨ててアイスティーのストローを口にする。
「俺使わないし、どれか一個でも持っててよ。三分の一じゃん」
「そうだけど….....」
どれがいい?、と渋る水田さんに迫って催促する。
「うーん……選ばないとダメ?」
「.....................ダメだろ」
「じゃあ角名くん誰かにあげなよ」
「じゃああげる」
「私以外ね」
嗚呼、全く。素直に受け取ってくれるとは思ってはいなかったけどそこまでか? 予想していたようなしていなかったような結果に俺は頭を悩ませた。