【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい
「角名、中野が探しとったで」
「中野? じゃあ大丈夫」
「そんなわけないやろ、チクるで」
脅しのようにそう吐くと角名は眉間に皺を寄せてあからさまに嫌そうな顔で俺を見た。
「片づけるだけやん」
「じゃあコイツよろしく。水田さんの弟らしい、迷子やって。本部に連れて来られてついでに付き添い頼まれてるから」
「だから迷子じゃないですって」
「いやいや、ちょい待ち??」
(水田さんの? おとうと?)
まさかの想像もしていなかった展開に、さすがの俺も困惑した。
「え、ていうか角名なんで弟だって分かるん?」
「僕が言いました」
角名から視線を下げる。
改めてしっかりと見るその顔立ちは、確かに水田さんの面影もあった。
確かに似とる。目とかそっくりそのままや。
「この人姉ちゃんが言ってたオレンジの服着てたから同級生だって思って。それにお姉ちゃんの方が多分お母さんの場所知ってるし。俺母さんに連れられただけですし……」
「その姉ちゃんってよさこいやってたりするんか?」
「……? まぁ、よさこいのイベントはいつも二人ともいないです」
「もしかしって、踊り子やっとる?」
「はい、母さんが元々やってて、」
水田の弟であることはどうやら確かなようだった。
「僕早く家に帰りたいんですよね、明日練習試合だし…………」
「練習試合?」
聞きなれた単語にふと、記憶が遡る。
(そう言えば、弟バレーしとるって言っとったよな……?)
それに水田の弟が持ってるあれ、五年前のオリンピック選手権の時に販売された日本バレーの限定タオルや。めちゃくちゃバレー好きやでこいつ。
「練習試合って、バレーの?」
「そう」
「じゃあ俺、知っとる?」
「宮侑。春高で見ました」
「呼び捨てかいな………ほな、好きな選手とかおらんの」
「ないです」
「おいおい、そこは宮侑さんですって言うところやろ」
微笑みながら手を頭に置くと、そっと俺の手を払い。頭をパッパッと、まるでばい菌を払うかのような素振りにギョッとする。言葉遣いとは裏腹に、どこか大胆な行動に既視感を覚える。