【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい
「そんな荒っぽい態度、俺にとってええんか?」
「…別に、」
水田の弟は続けて「俺は、」と口を開いた。
「僕は、僕の思う理想の選手になるので」
「なんや、お前選手になるん?」
「…………」
「おいおーい? さっきからさりげなく失礼なことしとるけど、俺一応年上やし先輩やぞ?」
そう言いながら肩を抱き寄せようとするとスッと身体を思わず口角が引きつった。やっぱ突っかかるなコイツ。兄弟そろってどうやったらそんな流し癖がつくん?
「まあええで、まだ回ってない情報やけどな、俺は日本代表のユースに選ばれたんや」
日本代表のユースという言葉に水田の弟は勢いよく振り返った。
(ほーら食いついたで)
鼻を高くして、水田の弟を見下ろした。
するとまじかよ、おまえが? なんて言いたげな、虐げな目をして俺を見る。あれ、思ってん反応とちゃうな。
「僕は、いつか、絶対、日本代表のセッターになるし、お前よりも長く世界のコートに立つ」
握られていた拳が力んでいるのが見え俺は確信した。
コイツは絶対ここ(日本代表)まで這い上がってくるで。
嫌いじゃないで、そういうの。楽しそうやん。
「まぁ、頼まれたら教えてやってもいいで? 俺が日本代表のユースに選ばれたノウハウってやつを」
その言葉に水田の弟の目が揺らいだ。あいつにそっくりのその瞳が期待と熱意に染まっていた。
プライドはなかなか高いやつやし、真向から頼んでくることはないやろうけど。
「……お前、名前は」
俺の質問に少し考えた素振りを見せると、水田の弟は何かを悟ったように、悔しそうに口角を引きずらせながらも「蓮」と無愛想ではあるが、ハッキリとそう口にした。