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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい





「え…ッ!?!?」

 俺が声を上げたと同時に両サイドにいた治と角名の身体がビクリと跳ね上がった。まだ飲み込まず声を上げたせいで咀嚼中だったきゅうりが口からこぼれ、角名も「うわ…っ!?!?」と声を荒げた。びっくりさせんなよと言いたげに俺の肩を押す。

「何してんの」

 鮮明に思い出すのはあのついさっきぶつかった時のこと。

【伊藤 090-0000-0000】
【稲荷崎高校片付け(集合) 11:00~】

 あの手の平にマジックで書いてあったメモ。

(伊藤って確か治んとこの担任や)

 絶対そうや。間違いない。
 角名が言っていた通り、二年一組で休みなんはあいつだけや。
 だから俺のスマホ見て焦ってたんや。俺だって気付いて、本当はよさこいの踊り子やっとって、それを俺にバレんようにしとったんや。

「あぁ! なんでもないで! 自分の分担思い出したんや! ほな角名も後で焼きそばの礼待っとるわ!」
「お前さっききゅうり貰ったんちゃうんか」
「あれは渡す前に貰ったんや! んじゃまたな角名!」
 
 慌てて俺はその場を後にする。バレーやっとる時みたいに頭が段々と冴えて来た。
 伊藤先生はなんにも係の責任者にはなっとらん。部活の顧問も。持ってるとすれば治のクラスの担任だけや。
 しかもあの片づけの時間、あれは実行委員が本部のゴミ収集するって治が言ってた時間帯や。プリントにがっつり蛍光ペンでライン引いとったから絶対や。

 あの時ぶつかった踊り子、絶対に水田千乃や。
 あいつ、踊り子とかあんな陽気なことしてるんか。なんでそんな隠す必要があんねん。

「ほんと感じ悪い奴、別にええやん、カッコイイやん。」

 女心ってやっぱわからへん。


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