【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい
「……………部活のだょ」と、私は再び吐き捨てる。質問に答えたはずなのに、もう明らかに会話のキャッチボールは終わったはずなのに。後を付けてくる侑くんに対抗し、私はわざと他クラスの下駄箱に向かい、2年生の下駄箱を一周してから自分のクラスの下駄箱に向かっても後ろをついて来る。
一体私達は何をしてるの。私の世界で何が起こってるの。
「部活の練習? そんなら運動部やんな? 弟何部なん?」
侑くんの世界から角名くんとあの怖い先輩はどうやら抹消されているらしい。
教科書で重くなったスクールバックを隣に置くと、そのスクールバックを退かしてその場所にしゃがみ込んだ。いや、ものすごく雑に扱ってるけどそれ私の鞄。
「絶対バレーやな? 顔に書いてある」
どうやら私はよっぽど険しい顔をしていたらしい。
私の言いたくなさげな顔を見て侑くんが笑いながら言った。
「ていうかバレーできんの?」
「…………ボール、投げたりとかだよ」
「ポジションは」
「……………………」
「……………………俺と一緒やな?」
今度はバチンッ、と音が鳴るほど強く自分の顔を手で覆った。それを揶揄うように「また顔に書いてあったで〜」と茶化してくる。
いつものポーカーフェイスと平常心が保てない。最悪だ。だって身内にも突っ込まれるなんて普通思わないじゃん。
何がそんなに嬉しいのか。「そんな隠さんくてもええのになァ!」なんて、人の苦労も知らずに陽気に私の背中をバンバンと叩いてくる。