【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
喧嘩をしていたのは………同じクラスの治くんと双子の侑くんだった。おそらくさっきの声は侑くんが治くんのことを〝サム〟と、呼んでいたらしい。
それはそうだ。同じような名前だから二人の間にお互いのあだ名があっても当然だ。私と同じクラスの宮治くん。彼はクラスで関わりたくないランキング堂々の第一位に君臨している。
治くん達は学校でも世間の一部でも結構有名人だったりする。どちらかと言うと侑くんの方が有名らしいけど私からしたら二人とも同じようなものだ。そう、彼らは超危険人物。出来る限り関わらないように警戒していたはずなのに、今までそんなことすら知らなかった私が一番怖い。
そして双子の侑くんと学校でもよく喧嘩していると噂の二人。実際、生で見ると本当に痛々しい。本当に見ていられない。私が証人として証明できます。
そんなことを思っている間にも二人の喧嘩はエスカレートしてゆく一方で止まる気配を見せない。周りを見渡すも助けを求める通行人どころかあんなに噂されているはずの別館の亡霊の気配すらも見当たらない。そうだよね、みんな関わりたくないよね。なんて亡霊にさえ共感して同情してしまう。
そもそも第一発見者は私、もう私がどうにかするしかないのかもしれない。
私だって無慈悲じゃない。人間だもの、慈悲くらいある。でも――平凡を望む私の腕を誰かが掴んで離さない。行かなきゃと思い歩みを進めようとするも、いや、でもなぁ…と、壁に背を付けて壁から覗き込む行為を無心に繰り返す。嗚呼、誰もいなくて良かった。………いや、全然良くねぇ。
気持ちはある。けど一歩踏み出せない。…………もう、最終手段を使うしかない。
二人の喧嘩を覗きながらノールックでスカートのポケットから取り出したのは自分のスマートフォン。そう――校内にいるにも関わらず学校に電話して助けを求めるのだ。もうこれしかない。私にはこうすることしかできない。所詮他人がどうなろうと自分が良ければそれで良いんだ。
スマートフォンのロックを解除して着信履歴から学校を探ろうとした時だった。