【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
ガタンッと、ドアを閉める音が人通りの少ない廊下に響く。
先生から受け取った参考書を戻し終え図書室を後にし私は今度こそ下駄箱へと向かう途中、せっかくだからと思い普段は通らない廊下を通てみたりといつもと違う風景を楽しんでいるとやけに階段の向こう側が騒がしいことに違和感を感じた。確かこの階で部活に使っている教室は一つもないはず。
一瞬変な噂が頭の中を過よぎったが、それはすぐに消えてしまう。私の学校でもそういう噂はよく聞く。だって、学校という存在は必ずしも怪談は付きものだ。
でも、これは直感で分かった。その騒がしさは妙に聞き覚えのある、聞き取れるような単語ばかりが並んでいる。それは一歩、また一歩進むたびにどんどんと確信へと変わっていく。
「やかましいわ…ッ! 大体アレはサムのせいやろが!」
「おいッ!! 被害妄想も大概にしいや!!」
どこかで聞いたことのあるような声だった。
近づくとその声の正体は階段の踊り場から聞こえてくる。しかも聞く感じだと、かなりマジな男子の喧嘩っぽい。騒ぎからして明らかに通れそうにないが、私にはこの後バイトが迫ってる。しかもパシリにされたおかげであり余っていた時間はバイトへ向かうにはぴったりな時間。なんかうれしいような悔しいような気もするけど、生憎現在地は校内の別館の最上階。一階の下駄箱へ行くには一つしかないこの階段を下りる必要がある。
伊藤先生のパシリから始まった小さな偶然が、こんなにも大事おおごとになってしまうなんて思ってもいなかった。
そういえば今日の星座占い何位だっけ、見るの忘れちゃったなぁ。と自分の運の悪さを噛み締める。自分の不運に悔やむ暇もなく、ふと頭にひとつの考えが浮かんだ。
いや、逆にこれはチャンスなのでは?
今、彼らは私のことなんてこれっぽっちも見ていないし気にしてもいないし気づいてもいない。自分自身に無我夢中だ。一応念の為、身構えながら壁を盾にしチラッと覗き踊り場の様子を確認すると、私は目を疑った。