【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい
「ごめん」
でも、これだけは後悔はしない気がする。
多分治くんは、私と同じ、巻き込まれた方の側だから―――。
騒がしい教室の中、なぜか自分の声だけが響いたような気がした。
治くんが目を丸くする。
「なんで? なんで謝ってるん?」
頬杖を付くのをやめ、突然謝罪を述べた私に動揺しながら治くんは椅子を回転させ身体を向けた。
「ちょっと自分勝手すぎたかも、……………前の発言とか、…えっと、関わらないでとかさ」
「ちょっとかい」
治くんの発言に心の中でギャグ漫画みたくグサッと効果音が鳴った。
けれど冗談で突っ込んでいることくらい私にも理解できた。目を細めてはにかむ治くんに、嫌味っぽさは感じなかった。
もし私がヒロインだったなら、絶対に確定ルートに行っていた。よかった、私ヒロインなんかじゃなくて。心からそう思った。
「まあ、分からんでもないよ。俺も面倒なん嫌いや」
再び椅子を回転させて教卓前で頬杖をつく。治くんなりの気の効いた優しさか、それとも本質なのか。
「特に侑と角名な」
「わかる………」
無意識にそう呟くと治くんが吹き出した。
慌てて口元を手で塞ぐと「別に言わんよ、同じような人がいて俺も苦労せんわ」と。嗚呼、治くんも治くんで苦労してるんだなぁと改めて感じた。