【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい
―――何に?
眉間に皺を寄せた。
そもそも私は、いまこの状態で何に焦ってるの。居心地が悪い? 何を今更、いつものことに過ぎない。
………認めたくない。今日、まさか私に、本当に罪悪感なんて感情が合ったなんて認めたくない。だって、あの時だって、私は別に喧嘩を見過ごす罪悪感で止めたわけじゃない。
でも時々、揺らぐことのなかった根本が揺らぐ時がある。
それはこぞって、いっつも治くんに限って起こる。
―――もしかして、殴られて大事になった黒幕は私なのでは?
悪魔の囁きが時々聞こえる。
私の身長があと一センチ高ければ殴られることはなかったし、アザを意図的に押されることだって………いや待って、やっぱり私のせいではないな。悪魔の囁きに天使が混じってきた。
確かに、根本的に悪いヤツはいる。
けど、自分勝手な憶測とか、そもそも嫌いとか苦手とか、それは人に押し付ける理由にはならないし。
私は、多分、まだ、後悔している。
自分のあの時の行動が、正しいと思って行動したのに、喧嘩を止めたのに、私はその結果こんなことになって後悔している。
放っておけば時間が解決してくれる。ずっとそう思ってた。そう思って、私はわざわざ稲荷崎高校を選んだんだから。
それに、あの三人がして私だけがしていないことがひとつある。
唇を噛んで悩んだ末、今このタイミングが誰にもバレないと思った。
「………………あのさ」
私は教卓の端にそっと手を置く。それに気付いた治くんが振り返った。
改めて視線が交わり、自分で切り出した癖に私は目を泳がせた。
この選択が正しいのか、正しくないのか。真っ先に思い浮かんだのはそんな思考だった。
またあの日と同じだ。自分のことよりも、他人の心情を優先したあの日みたいに。複雑な気持ちだった。