• テキストサイズ

【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第2章 夏に濡れ衣ぎを着させたい





 そして、その翌日にはよさこい祭りに向けての話し合いの時間がクラスで設けられた。

 クラスの代表となる実行委員長はみんなの推薦で治くんが選ばれ、本人もそれに承諾した。
 副委員長を決める時、立候補や推薦を聞く前に担任の伊藤先生から私へと声がかかった。
 なんとなく、そんな気はしていたし、理由は聞かなくても自分で分かっていた。
 いつもならグチグチ言うところだけど、今回ばかりは先生の言い分も納得がいったし、自分でもこれくらいはしないとクラスのみんなに申し訳ない。
 それに、一応これでも優等生をやっている設定になっている。

 治くんが教卓に立ち話しを進めている後ろで、私は静かに白のチョークを手に持った。
 出店はすぐに定番の屋台と決まった。かき氷にりんご飴、ヨーヨーに射的。方向性がバラバラだった為、治くん班ごとでの話し合いを提案するとクラスはすんなりとその案に従った。
 意外とリーダーシップがある。なんだかんだ、そういう仕事が向いてそう。

 話し合いでガヤガヤと教室が騒がしくなる。
 特にやることもなくなった治くんは教卓前の椅子に腰を下ろした。案外教卓の前が似合っているせいでちょっとだけ面白い。
 同じく私もすることがなくなってしまった為、チョークを置いて手を払うと控えめに治くんの背後に立って時間が過ぎるのを待った。

「今年は参加するん?」

 頬杖をつきながら治くんが振り返る。

「するならすんなり副実行委員やってないよ」

 苦笑いを浮かべると「まぁ、せやろな」と吐き捨てて治くんは視線を戻した。話し合いで騒がしい教室の中、教卓の前だけがしんと静まり返っていた。

(…………わかる。私にはわかる。)

 治くんがわざと私に話しかけないようにしていることを。
 だってさっきから無意識に治くん貧乏ゆすりが止まっていない。まだほかに何か言いたいことがあるのかもしれない。それか、今のこの状態が気まずいのかもしれない。

(ていうか治くんは喧嘩してただけで、ほぼ無関係なんだよなぁ…)

 次第に私も居心地が悪くなり、徐々に焦燥感を感じた。


/ 89ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp