【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
「俺に構って貰えなくてさ、毎日つまんなくない?」
一体何を言っているんだか。血迷ったか。私は角名くんの質問に対し迷いなく口を開いた。
「いいえ全く、むしろせいせいしてる」
「お前俺が前の席だってこと忘れてるでしょ」
こっちはプリント回す権利持ってんだぞ。と言いながら角名くんは自分の机の引き出しを漁り始めた。そして手に取ったのは〝バレー用〟と書かれたノートだった。忘れ物を取りに来ただけだと知り、それならここに長居はしないなと私はほっと肩を撫でおろした。
「俺はつまんないけど」
「あぁ、そう」
角名くんは呟くと取り上げた私の私物を何事も無かったかのように机に並べ置いた。さらになぜか無理やりシャーペンを握らされ持たされる。幼児か私は。
割とすんなり教室から出ようとする角名くん。珍しい、逆に心配になって来るな。角名くんが教室から出る前に「ドアは閉めておいて」と言おうと思い口を開いた。
「ねぇ、私って笑ってないのかな?」
あっ、と後になって声が出た。思わず口元に両手を当てた。
言いたいことをいおうとしたはずなのに、さっきまで考えていたことが真っ先に口から出てしまった。それはもう、今後の展開次第では過去一の失態になってしまうくらい。だって彼は危険人物なんです。何をしでかすか分からない私にとって得体のしれない生命体なんだから。
「なんだ、質問? 珍しいね」
角名くんが目を細め口角を上げて言う。嗚呼、絶対悪いこと考えてるよこれ。
「まあ、そうだな………普通だよ。別に他の人と喋ってても普通に笑ってるよ」
「そうなんだ」
「ただなんか、一人でいるとオーラが違う。なんかずっとこーんな感じだし」
「なにそれ、私の真似? 殴るよ」
「ははは、できるといいね」
オーラが違う。そう言った角名くんは髪の毛を顔の前に引っ張り一生懸命実演して伝えてくれる。おそらく私の真似だろうけど、私そんなに前髪長くないし。あと多分ちょっと馬鹿にしてる。いや、ちょっとじゃないな、かなり馬鹿にしてるなコレ。