【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
。。。。。
「雪ちゃんばいばーい!」
「またね~!」
「うん、じゃあね~」
翌日の放課後、最後に残っていたクラスメートが教室を出る。開いたままの窓からは、校庭でランニングする運動部の掛け声と隣のクラスの笑い声が聞こえてくる。
そして放課後、私が残っている理由はひとつ。今日はシフトの時間割が少し遅い為、時間になるまで教室で課題をするつもりだ。それに、放課後誰もいない教室でひとりなんて久しぶりな気がする。
〝『笑った方がええで』〟
教科書とノートを机に広げる途中、なぜかふと侑くんに言われた言葉を思い出した。
やっぱり私、普段そんなに怖い顔してるのかな…? そんなこと言ってしまったらさっきもちゃんと笑えていたかも危いぞ。
なんだか不安になってほっぺを叩いたりつねったりしてみるが、いや、でもここの筋肉はさっき使った覚えがあるなとうんうんと頭を悩ませる。
「…なにしてんの」
よくよく考えればこの時点で気づくべきだった。ここは――学校だと。
完全に見られた。しかもよりによって最悪な奴に。散々えらい目に遭わされてきたこの声、顔なんて見なくてもわかる。
私は何事もなかったかのように顔から手を離すとペンポーチからシャーペンを取り出した。……よし、課題をやろう。
「いや、なに何事もなかったかのようにしてんの」
これは、相手にしたら負けだ。そう思い私は視線を向けることのないままノートに今日の日付を記入する。
「………聞いてる?」
何しに来たのか分からないけどずかずかと教室へ入って来た。視界に映るのは学校指定じゃない運動着と短パンと、学校の指定ではないハイカットの上履きが見える。確かもう部活始まってるよね。ほんとに何しに来たんだろう。
「ねぇ」
すると私の机の前に立ったところで持っていたシャーペンを奪われた。それに対抗してすぐに筆箱から新しいシャーペンを取り出すと、そのシャーペンも筆箱もノートも問題集も没収され前の席の角名くんの机に全て置かれてしまう。……もういじめじゃん。むしろ、いじめ以外に何がある。
何もするすべもなく、諦めが付いた私は目の前に立っている角名くんへ視線を向けた。