【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
。。。。。
「…………あれ、」
バイト先の更衣室で着替え終わった後、私はそう無意識に声を漏らした。ブレザーのポッケに入れておいたバイト先のネームが見当たらない。確かに教室から出るときにはブレザーのポッケに入れていたはずだったのに。
一体どこで落としたんだろう。落とした音もしなかったし、落とした感覚もなかった。もし校内で落として拾われたりしたら最悪だ、あれにはバイト先の名前とフルネームがはっきりと乗っている。
今から来た道を戻ってもあと10分後にはバイトの時間だ。ひとまず、暗闇で落としたことに希望を持つしかない。
心の内でそう願いながら髪をまとめ、赤のギンガムチャックの三角巾、ブラウンのエプロンを身に着ける。忘れて来たネームは予備のネームを書き換えて代用し、五分前にタイムカードの入力を終えてレジに向かいパートの人と交代する。
交代後、さっそく厨房の店長からトレーいっぱいに今日最後の焼き立てのパンを受け取るとそれを持って店内を周りそれぞれを棚へと移して見栄えを整える。
カランカランとお店のドアが開ける音を合図に、私はいつ通りに仕事をこなした。