【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
「……とにかく、昨日あったことも今日あったことも全部忘れて下さい。これ以上余計なことに巻き込まれたくないんです。冷たく聞こえるかもしれないけど、三人も必要な時以外は話しかけなくていい。気なんて使わなくていいから。お菓子は………ありがとうございますってお母さんに伝えておいて欲しいです」
「あれ? まだ諦めてなかったの?」
「当たり前。………じゃあ、時間が押してるので。ありがとうございました」
私は返答を待たず軽く頭を下げると教室を後にした。
どちらかと言うと、……家族以外の人とはあまり深い関係になりたくない。と言った方が誰も傷つかないからそう言っておくことにする。別に人の好き嫌いはないし、どちらかというと興味があまり湧かないだけ。
言ったでしょう、コミュニケーションは大切だって。ただ、深く関われば関わるほど、ろくなことになんてならないのは目に見えているだけだ。
そしてあれから二週間が経過した。侑くんと治くんとはあれっきり話していないし、あの日から角名くんの地味な嫌がらせももうそれは怖いくらいにピタリと止んだ。
「…無理や」
そしてこれは、二週間ぶりの出来事でもある。
下駄箱へ向かう廊下の角を曲がろうとしたとき、運動着姿の侑くんが視界に入り咄嗟に身を引っ込めた。もそこには顔は見えなかったけど女子生徒もひとりいた。またこのパターンか、と呆れ果てどうやってここを突破しようかとブレザーのポッケに手を突込み背を壁に預け意外と真面目に考えていたのもつかの間、目元を押さえながら私の前を横切ったのはさっきの女子生徒の姿だった。上履きの色からして一年生だ。
「盗み聞きなんてええ趣味やな」
曲がり角の向こうから聞こえた侑くんのその言葉は明らかに私に向かって言っている言葉だった。私は上履きをその場で脱ぐと片手で持って侑くんに顔を出した。
「道がこんな状態だったら、通れる道も通れないよ」
「…まぁ、せやな」
「…じゃあ、私、バイトだから」
前のこともあって少し居心地が悪るかった為か、私は侑くんには目もくれず足早にその場を後にした。