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【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !

第1章 喧嘩止めたら殴られた。





 気づけば時刻は十八時四十分、バイトが終わるまではあと二十分。お店は二十時まで営業しており、林檎の木をテーマにしたパン屋〝Pobreadポブレッド〟は店長の個人営業だ。
 閉店前の時間帯は帰宅途中のお客さんや割引を狙いに来た主婦や部活下校の他校の生徒が多い。休日になると、隣のカフェスペースが解放されより一層賑わいを見せ、知る人ぞ知る隠れ家と化したカフェとなる。なにしろ、アルバイトをしている身としては稲荷崎高校とさほど離れていないはずなのにうちの生徒があまり来ないというところもポイントが高い。
 いつもは片付けのラストまで残っているけれども、今日は上がり方面の電車が遅延しており客足が少し滞っていると店長が言っていた。だから人手が足りているらしく早めに上がっていいと言ってくれたのでお言葉に甘えることにした。

 時給は他のチェーン店よりは高くはないけれど、店長はすごく優しいし面白い。まかないはこの店の美味しいパン。理不尽なクレームもなく、なんだかんだ一年生の頃からずっと続けている。そういえば、最近はまたアルバイト募集するとかしないとかいろいろ店長がひとりごとをぼやいていた。

 そんなことを考えながら出入口のトングとトレーを補充しているとカランカランと店のドアが開く音が響いた。

「いらっしゃいま…」
「あ………、どうも…」

 振り返ればそこには見覚えのある顔の客。そう、さっきぶりの宮侑くんだ。
 時間帯的に部活終わりだろうか。あれ、私バイト先言ってたけ? と一瞬焦るが私に限ってそれは絶対ない。

「あの、水田さん…これ。落としてったで」

 しかしそれは侑くんが差し出してきたバイト先のネームプレートですぐに理解することとなる。


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