【HQ】喧 嘩 止 め た ら 殴 ら れ た !
第1章 喧嘩止めたら殴られた。
このまま侑くん達のお母さんがとは言わず差し出されたら、私はきっとわざわざ焼き菓子店のお店に行って買ってきたんだなと想像する。しないわけがない。私のお母さんなんて、この前珍しくチョコケーキを作っていたと思ったらただ周りが丸焦げになってたホットケーキなだけだったし。そんなお母さんから育った私からしたら、このクオリティがもはや一般家庭の双子の運動部の男の子二人のお母さんの手作りですということへの違和感がすごい。
「え、いいの? こんなにいっぱい? 多分作るのすごい大変だったよね?」
「ええよ、むしろ受け取ってもらわんとこっちが怒られるからな……」
「あの時は人生で二番目に死ぬかと思ったわ…」
と顔を青ざめながら今にでも震え出しそうに治くん達は口をそろえてそう言った。いや、本当にあなた達のお母さんは一体何者なの……?
「そうや、痣はあんまりいじると治るの遅なるからあんまいじらんといてな。多分一週間くらいで痣は消えると思うで一週間だけ悪いけど我慢してな」
わざわざそんな後先のことまで心配してくれてる先輩に私はジーンと胸が熱くなる。角名くんとの態度の差で風邪引きそうなレベルだ。……いや、待てよ。不意に私はさっきの先輩の言葉に目を付ける。
嗚呼、と私は思い出したかのように後ろにいた角名くんを伺った。当然振り返った私に反応するもどうやら警戒心はゼロのようだ。これから何が起こるかなんて、きっと彼は想像もしてないだろう。私は意地悪気にニヤッと笑うと湿布の張ってある方の頬に手を添える。するとやっと察しが付いたのかギョッとした顔で角名くんが顔を引きつらせた。そう、今角名くんの脳裏に浮かんでる最悪の状態。大正解だ。