第2章 拝啓、ロボットさんへ【イグゼキュター】
「じゃあイグゼキュターさん。それ、ダンボールに入れて、彼女手伝ってあげてくださいよ」
そんなに好きなら助力してやる、と恋のキューピットになることを決めた。
女性は私がそう発言するとパァ、と花開いた様に笑みをみせる。
「い、いいいいいんですか!?」
「いえ、私にはこの人を護衛する任務がありますので」
「いえ、じゃないんだよ!!あああもうわかった私もついて行くから!!これで護衛できるでしょ!」
「わかりました。どこへ運べばいいでしょう」
「えっと、第五資料室に…」
女性は、ダンボールを乗せていた台車を押し、歩き出す。そのすぐ後ろをついて行くのか、と思えば私の背後で資料を持ったまま動かない。
「…何で背後をとるんですか。暗殺者なんですか」
「貴方を狙う輩は常に背中を狙うでしょうから」
「…はいはい。行きますよ…」
ロドスの中にいるものか、と言おうとしたが、それが彼なりのやり方なのだろう。黙って女性の後をついて行った。
「(あわよくば逃げ出そうとしたのにな…)」
考えが見透かされたのかどうかはわからない。だが、今は逃げ出すことはできなさそうで諦めた。
やがて、女性の案内でその第五資料室というところにやってきた私たちは、その領域に足を踏み入れる。
「ここです。あ、それはあちらへお願いします」
「はい」
中へ入ってイグゼキュターを誘導していく女性を横目に、私は指示されていないので適当な机に置くことにした。
「(お邪魔しちゃ悪いだろうからさっさと出ようっと)」
音を立てないように資料を置き、ドーベルマンさんに教わった歩き方で物音一つなく部屋を出た。
そこから数メートルはその歩き方で、角を曲がった瞬間に走り出した。
空はもう茜色。さっさとあのレユニオン兵から昨日の面白い話の続きを聞いて夜は楽しく眠るのだ。
この世界にきて唯一の娯楽。毎日聞くのが楽しみで、有頂天で廊下を駆けていたのだが。
「おすすめしないと言ったはずですが」
臍の上に回った腕に今月一番の悲鳴をあげた。