第1章 はじまりは
コンコン…
「失礼します。」
「…おや、ローズハート君。どうしました?」
大きな扉を静かにノックして入っていった赤髪の人。中には学園長と思わしき人物が座っていた。何故そんな曖昧なのかというと、私の知ってる学園長とはかけ離れていたからだ。綺麗な帽子に不思議な雰囲気を放つマント、何より気味が悪いのはカラスのような仮面だ。
「学園長、廊下でこの子と会ったのですが…どうやら異世界から来たようです。」
「……ふ〜む…ユウさんと一緒ですね。分かりました、引き受けましょう。」
「よろしくお願いします。…じゃあ僕達は戻るよ。」
「また何かあれば寮に来い。じゃあな。」
2人はそう言うと部屋から出ていってしまった。この変な学園長と2人きり…少し心細いぞ。というか、また出たよユウさん。猫がいってた子分……だよね?猫じゃなくて人なんだね。
「さて………まずは、お名前を聞きましょうか。」
「あっ……えっと、です。」
「さん、ですね。私はこの学園の学園長、クロウリーです。」
あ、でも見た目に反して結構礼儀正しい。怖い印象があったから何か拍子抜けだ。肘をつけて、私をじっ、と見る。
「さて、さん。貴方は人間ですね?」
「……えっ???」
「おっと失礼。ローズハート君から聞いていないようですね?ここは魔法士学校です。ですから、生徒は人間の方が少ないのです。」
魔法士学校……よく思い出してみれば、確かに赤い髪の人が言ってたような。魔法だなんて…この世界では当たり前のことなのだろうか。この世界では、なんて言ってるけどつまりはここは住んでた場所と全く違う場所だと認めざるを得ないのか。
「ユウさんと言う人は知っていますか?」
「……いいえ。」
「なるほど……迷い込んでくる者に共通点はないと…」
ユウさん。さっきから何回も聞いている名だ。どうやらその人も私と同じ境遇に立っていて、元の世界へ戻る方法を探しているらしい。今はオンボロ寮の監督生としてこの学園にいることを許可している。なるほど、ユウさん=監督生なわけね。