第42章 モデル
クラスには必ず男女ともにリーダー的存在がいる。
アキはその中心。
竹ちゃんはクラスの中ではムードメーカー的存在。
議長がリーダーということでもなく、初日…1週間と過ごしていくとグループが形成されていく。
俺はアキが話掛けてくれなかったら、この頭でどのグループに属していたのかと考えてしまう時もある。
「んで?なんで急にモデルになろうと思ったんだ?」
1、2時間目をつかって行われる健康診断。
動きやすいようにジャージに着替え、クラスごとに分けて誘導されていく。
「服を買うためには金がいるだろ?その金を貯えようと求人雑誌に目を通してたら、もらった名刺を思い出して電話したんだ。契約の際、モデル事務所のほかにQUADERNOっていう芸能事務所もあるんだが知ってるか?」
「超有名…!!戦隊シリーズに出てた■■とか■■いるところだろ?マジすげぇじゃん!!」
「モデル事務所に契約したらプロダクション契約も必須なんだと。レッスン料や稽古料は年数契約で全額免除されるってことになった」
「全額免除!?そんな言葉あんのか!!」
「重宝してくれるのは此方としても有難いよな。金が欲しいのにレッスン料とられて、有名になって稼ぎたいのとはプラマイゼロになる可能性だってある訳だから」
「アキならすぐ有名人になるって!!学校でもこうだろ!?もう色々話しまわってスゴイことに…」
「だからさ、タケ。仮に俺が有名人になったとしても、俺はここにいる仲間と卒業したい。仕事が増えたら、一緒にやろうって決めてくれた応援団にも顔出せなくなる。ヘンに注目されて困らせることが人より多いかも知れないけど、必要な時に頼らせてくれないか?タケになにかあった時は俺も助けになりたい。俺一人じゃどうにもならないことがあったら、助けてくれないか…?」
「………」
近くで聞いてたけどアキはすごいなと改めて思った。
台詞かと思うくらいの名演技。
頼りたい、助けてほしいなんて早々簡単に出る言葉じゃない。
それを本音で口説きにいっているアキはやはりすごい。
口説きに掛かった竹ちゃんは微動だにせず、かと思えば急に顔が真っ赤になり出した。