第42章 モデル
今日も歩いて学校へ行った。
読書は頭が良くなると勧められて、アキが貸してくれた本を読みながら時間を潰す。
(あっ!アキがきた音だ)
アキが来ると廊下がちょっと…いや、かなり騒がしくなる。
だからすごく分かりやすい。
ドキドキしながら入口の方に目を向けているとバッチリ目が合って、フッと笑われたように挨拶される。
「おはよ」
「おは…」
「おはよう!牛垣くんっ!」
「おはよー!」
クラスの人気者のアキは俺のことをみて言ったのかもしれないけど搔き消される。
バッチリ目が合ったけど本当は俺じゃないかもしれない。
アキはそんなこと気にする様子なく、いつものように丁寧におはようと返しており、本で顔を隠しそうになった俺の顔を見てニヤッと笑う。
「ユウ。おはよ」
「おっ、おはよっ」
「ちゃんと読書してるな」
「あと半分ちょっと。昨日のモデルの…──っ」
すると急にアキの手が伸びてきた。
口を塞ぐように人差し指を当ててきたが、会話の切れ端を聞いていた隣りの女子が悲鳴を上げる。
「えっ!?モデル!?!?!?」
「ぁ………」
そこから一気に爆発した。
もう何が何だか分からないくらい、特に女子がキャーキャー興奮していて、それを中心にして尋問するように竹ちゃんが喰らいに掛かっている。
アキはこれを避けたかったに違いない。
きっとまだ親のほかに、俺にしか話してなかったことだったんだ。
「バイトしたいと思って始めたことだ。そんな大袈裟になるなよ」
「だってモデルだろ!?しかもQ-BOYSって人気の雑誌じゃねぇか!!これが興奮せざる終えねぇよ!!いつ、いつ載るんだ!?」
「詳しく説明すると朝礼の時間になっちゃうからな。朝一の健康診断の時にでも話すよ」
相手の土俵には決して乗らない。
アキはヒヨりもしないし冷静な対応だ。
威圧的な竹ちゃんを抑えれば周りもそんな雰囲気になる。
集団の恐ろしさを知っているからよく分かる。
アキは一人でこの学級、学年、全クラスを粛々と牛耳っている。
本人はそんな気は一切ないだろうが、一匹の大型犬を飼い慣らすことによってクラスはどんな方向にでも傾くということに。