第42章 モデル
あれだけ堂々と演台で式辞を読んでいたのに、アキは別物として考えているようだ。
確かにあれはトップの成績としての務めだったのかもしれない。
それに比べてグランプリは自分の将来の為に行うこと。
「アキも緊張したりするの?」
「ん?そりゃ多少は緊張はするだろうが、勝ちたいって気持ちが俺の場合前面に出るな。それに楽しみたいって気持ちも半々にあって緊張どころじゃない」
「俺には分からない次元だ…」
「俺様然り、自己中心的なナルシストが俺の長所であり短所だからな。ユウは俺とは真逆で内省的なシャイボーイだろ?だから一緒に居てすごく話しやすい。おしゃべり相手は息苦しいか?」
「ううん。そんなことない。俺、どっちかって言うと話聞いてる方が好きだし…」
「でもたまに食い気味で聞いてくるの可愛いよな」
「えっ、あ…それは、俺も会話に交じりたくて」
昼休みはいつも楽しい。
自分でも自覚はしている。
食いつく話題。
「6月から応募はじまるってよ。身長175cm以上だからユウはできないな」
「いっ、いや、俺は読者で十分です」
「給与は小野寺さんとか直接聞いてみないとだな。一般会社に勤めても同じことが言えるけど、事務所トラブルはあるみたいだし。表紙の話に戻るけど津梅さんがここの一番人気?」
「今はこのトップツーかな。椿くんの人気も結構あって」
「でもまだ表紙やってないだろ?」
「もうすぐ2年目だけど単独では難しいよね」
雑誌は店頭に並ぶもの。
知名度がなければ、どんなに優れた魅力があっても手にとってはくれない。
しかし覆す方法はある。
知名度がなくても目を奪われる外見。
アキのビジュアルならもしくは…。
「まあアルバイトで高校生だしな。一発、自分の鼻っぱしを折ってみるのも良いかもしれない」
「えぇっ、折られに行くの?!」
「俺は自分のことイケメンだとは思わないが、恥にならない格好良い男になりたいと常に努力してる。実力社会の芸能界…、いい機会だと思わないか?」
やる気を見せるアキ。
一体どういう風の吹き回しかは分からないが見てみたい、応援したい。
俺が笑顔で応えると、アキも同じようにニカッと笑ってくれた。