第42章 モデル
津梅さんは推しだけどあくまで参考だ。
モデルさんのように綺麗に格好良くオシャレに着こなせないが、欲しい服のイメージは大体ある。
色は暖色系。
系統はカジュアル。
「お小遣いにはなるべく手を付けたくないし、早くアルバイトも探さなきゃとは思ってるんだけど…中々」
「ユウは接客向いてそうだけどな。見た目からして優しそうだし、ユウと喋ってたら癒される」
「えっ…」
「俺も服買いたくなってきたから短期バイトしよっかな。週末部活動ないし」
そう言ってアキはファッション雑誌から求人雑誌を捲っていく。
にしても癒されるって言われた。
可愛いの次に癒される…って。
アキは俺といて窮屈じゃないんだって、ほんの少し友達として自信を持ってもいいのかもしれない。
こんなダメダメな俺でも必要としてくれる誰かが居るんじゃないかって思ったら、春の陽気みたいに心の中がポカポカ温かくなる。
「モデルってどんだけ貰えんだろ…」
現実に引き戻されたようにジッとアキをみた。
俺の聞き間違えかもしれない。
けど、ちゃんと聞こえた。
半信半疑で目をみてたら見られていることにも気付いて、気恥ずかしくて頬を掻いた。
「モ…モデルの、仕事…」
「稼げると思うか?表紙飾れるってことは結構貰えんのかな〜って」
俳優やアイドルからのスタートではないモデルのお仕事。
今日会った津梅剣のことを思い出してくれているのだろうか。
だとしたら嬉しい。
俺がメチャクチャ好きで応援している人だから。
でも、アキの口から出たことには驚きだ。
勧めてきたお母さんに取った反抗的な態度。
小野寺さんや他のスカウトマンに会った時だって、全く興味ない素振りだったのに驚きのあまりで言葉を失ってしまう。
「このコンテストやグランプリで歩かなきゃなんねーのかな」
「知名度獲得には一番有効な方法だとは思うよ。皆がみんなアキのように声かけられて芸能活動している訳ではないし、無名で大活躍したいからこそ、こういう賞を設けてくれてるんだと思うし」
「原石探しってやつか。見てる分には面白いんだろうけどなぁ…」