第42章 モデル
そりゃ急にボリューム落ちたり、視線が揺らいだら勘ぐられるよなと自分でも思う。
自分を客観視して、本当に暗いやつだと思うけどアキは「器の大きさ」を褒めてくれた。
そういない人間。
アキは自分の凄さと弱さのギャップを見せた。
(けど、なんて声掛けたらいいのか分からない…)
言葉を伝える代替え機がないだろうか。
つぎ込むコインもないけど。
「ユウはダンスとか踊れるか?」
「ううん。ソーラン節くらいしか…」
「小学校の時にやったやつだな」
「東京でもやるの?」
「ああ、一番目立つように豪快にな。大人に可愛がられて、同級生に女みたいだって揶揄われて、自分を誰よりも強く見せたくて、低学年の頃はかなり威張ったガキンチョだった。今でこそ大分落ち着いたが」
アキの少年時代。
勝てない兄がいて揶揄ってくる同級生がいた。
負けず嫌いなアキは今でこそ何でも出来てしまうが、積み重ねてきた経験なのかもしれない。
「歌や踊りはいいぞ。俺が生徒会長になったらまた巻き込んでやろうと考えてる」
「またってことは中学の生徒会長だったの?」
「2年の後期と3年の前期を継続してやってた。歌や踊りは向き不向きがあるが、裏方も楽じゃない。俺がそういう風に仕向けて、引っ込み思案な子をガチ泣きさせて、先導者としては未熟だった」
「でも、その子は最後までやり遂げたんでしょ?」
「まあな。周りのサポート合ってこその生徒会だ。誰かを泣かせたとしても今度は上手く立ち回りたい。スクールに入ってる訳じゃないし、アイドルもK-POPもあわせて100曲以上マスターしてるけど、自分がいい刺激を受けたから共有したい」
「歌や踊りは晴れやかな気持ちになれるもんね」
アキはこんな俺の気持ちも分かってくれる優しい人間だ。
アキが生徒会長になるなら全力でサポートしたい。
歌も踊りも得意な方じゃないけど、アキをみて感じて、元気をもらったのは俺だけじゃないはずだ。
「話変わるけど、ユウはファッションに興味あるんだよな?」
「あ、うん。人並だけど…」
「どういう系統の服が好きなんだ?津梅さんと全部同じわけじゃないだろ?」