第42章 モデル
ノートとペンを走らせるが、横の雑誌が気になってしまい色々と語りたくて手が止まったりする。
集中しなきゃと思うのだが、津梅さんのこととかめちゃくちゃ話したい。
「─────」
「っえ?」
「いまこのインタビュー記事を翻訳してみた」
続けて言ってみて?と言われて英文を真似して読みあげる。
それからアキは一切、日本語を話してくれなくなって俺は聞き取ろうと必死になる。
雑誌の内容はなんとなく頭にあるからジェスチャーと雰囲気で何となく読み取って、同じことを繰り返すいう作業。
聞き取ろうとするから必死に頭を使う。
思い出そうとするからそっちでも頭を使う。
アキの舌が回りすぎて何を言ってるか、これで合っているのか分からないけど、何だかちょっと楽しくなってきた。
「you expression became calm.」
眉間をぐにぐにと指を差され、難しい顔が解けたと言われているような気がした。
あまりにも英語の発音がナチュラルだし、鼻も高いから海外の血が混じっているのだろうかと疑問が沸く。
「ねえ、一つ聞いてもいい?」
「なんだ?」
「アキのお父さんとお母さんは海外の人なの?」
「いいや、俺がこんな顔だからよく聞かれるけど残念ながら生粋の日本人だ。自分でも疑いを晴らしたくて、先祖代々の家系図を調べてもらったんだ。事実、俺の親父は弥生顔っていう今でいう塩顔、お袋は逆に濃いから縄文顔で、俺はいいとこ取りして生まれてきただけの話。親父の写真はあった気がするけど、お袋のはない気がする」
「あ…いいよ。写真探さなくても」
「あった。これが俺の親父。俺はどちらかというと親父似で兄貴は濃いからお袋似なんだ」
家族写真を見せるのに抵抗や気恥ずかしさがないのか、すんなり写真を見せてくれる。
お父さんはハンサム。
お兄さんもそうだけどお父さんも整った顔をしていて、ダンディな俳優さんでみるような体型維持がしっかり出来ている体つき。
白いシャツがよく似合っている。
ずいぶん若々しくて自分の父とは大違いだ。