第42章 モデル
(うわっ…。どストライク)
津梅さんの色んなパーツが総合して過去一番だったけど、いとも簡単に塗り替えていく同級生。
顔よし、腕よし、性格よし。
たぶん絶対、アキが有名人だったら冗談抜きで惚れている。
「このエプロン付けていい?」
「う…うん」
「ユウも料理する前に手を洗えよ」
「あ…そ、そうだねっ」
つい見惚れてしまって疎かになっていた。
俺の茶色のエプロンをつけて台所に立ち、肉に切り込みを入れたり、タレの仕込みをしてくれたり、炒める玉ねぎを切ってくれている。
手際が良すぎる。
俺なら玉ねぎが目が染みて、延々と泣きながら切っているのに全然涙が出ていない。
「す…すごい」
「もう仕込みは良いだろ。ユウが炒めて?役割分担」
「あっ…油引くよね。火はどれくらい…」
「中火でいいんじゃないか?そーそこ。ストップ」
一人で作るときは時間が掛かってしまうけど、アキのおかげであっという間に出来上がった。
頭の中にレシピがあるのだろうか。
だとしてもあの包丁捌きは見事だった。
トントントントンってリズム良く千切りされるキャベツ。
もう見てるだけで楽しかった。
そしてこのキャベツ、めっちゃ美味い。
「アキはもう千切りマスターだね!こんなに美味しい千切りキャベツが食べられたらもう十分だよ!」
「そうか?なら次はみじん切りだな。みじん切りといったら…、餃子か?作ったことある?」
「餃子いいねっ!まだ試したことないかもっ」
「具材はなに入れる?変わりダネは家じゃあんまり入れないけど…どういうのが好き?」
「んーとね。そもそも何が入ってるんだろう…ニラ?」
「キャベツニラにんにく生姜、あったら白菜も入れたいよな。でもこの時期だと白菜は高い。玉ねぎもいいよな。まあキャベツとニラありゃ十分だろ」
「うん。じゃあそれで」
「なんかヘンなの入れないの?」
「ヘンなの入れて…お父さんに食べさせるの?」
「フッ、自分が食うんじゃねーのかよ」
「お父さん生贄」
「ちょ、笑わせんな」
アキと食べる夕食は楽しかった。
最近は一人で食べることが多かったから尚更。
ご飯を食べ終わったら英語を見てもらい、アキは片手間に雑誌を広げていた。