第42章 モデル
5階建ての2階部屋が住まい。
家に入るまえにポストを確認し、階段を上がって鍵を回す。
「ど、どうぞ。狭い部屋ですが」
「お邪魔しまーす」
父と俺の部屋はどちらも洋室。
居間を抜けた方に俺の部屋があり、適当な所に鞄を置いてもらってクローゼットから俺の宝物でもある雑誌を取り出した。
「よいしょっと」
「ずいぶん持ってきたな…」
「中学生の時から買ってたんだけど、捨てるに捨てられなくって。去年のなんだけど、津梅さんが表紙やったのもあるよっ!」
「へえ…。テレビで良くみる人気俳優やアイドルばかりかと思ったが専属モデルの人も表紙飾れるのか」
「やっぱり知名度が高い売れっ子ジャニーズが表紙になることが多いよね。はがき案内やメールを送って目を通してくれているなら自分の好きなタレントさんの確率も上がるのかなって」
「なるほど。漫画雑誌でもアンケートの懸賞はがきってのがあるからな。ジャニーズのファンの熱量はアイドルというだけあって物凄いし、ドラマ主演を総なめ状態。こんなこと言ったら失礼だけど俳優陣に比べて圧倒的に演技力が優れてる訳でもないし、アイドルが悪いわけじゃないけど大手企業っていうのがよく分かる」
「アイドルは歌って踊れるキラキラした存在だもんね…」
「女性の場合はアイドルより女優が強いけど、男性の場合はアイドルが強い。次に歌手やミュージシャンも上がる気がするんだが」
「あー。言われてみれば!」
「そう考えると専業モデルって狭き門だな」
芸能人やタレント。
様々の職種と呼ばれる人たちがテレビや雑誌、ラジオ、舞台などで活躍しており、津梅さんもこの雑誌の中ではトップだが全体でみれば知名度も話題性も低いのが現実。
「読み込んだら時間かかりそうだ。腹減った。先に夕飯作っちまうか」
「うん。そうだね。今日は豚の生姜焼き作ろうと思ってて」
「生姜焼き美味いよな。キャベツの千切りもつけるだろ。俺いま千切りの特訓してるんだよ。早く出来たら格好良いと思ってな」
ブレザー制服を脱いで腕捲りをするアキ。
今はまだ春だし、体育の時も上着をきて目にはしてなかったが、肘から手首まで引き締まった男らしい腕が露わになった。