第42章 モデル
高校生なのに何でもできてしまうアキができないことって何だろう。
未成年ができないもの以外でなら不可能はない気がする。
今日は俺の家で食べることになり、アキはガラケーを取り出して母親にメールを送っている。
それが終わるとカメラを向けてきた。
「なあユウ。写真撮ってもいい?」
「え?…」
「初めて一緒に遊んだ記念にさ。いいだろ?」
「う、うん」
周りに人がいないことを確認して携帯を上に向ける。
小さな画面に映り込むために近くなる距離。
初めて肩が触れたと思ったら、後ろからグッと肩が回ってきた。
(ふえっ?!)
「はいチーズ!」
距離が近い。
でも、アキにしたら普通のことなのかもしれない。
通常運転で誰に対してもボディタッチが多い。
このコミュニケーションの高さはホームステイのいとこの家に関係しているかもしれないと思い込むことにし、照れ隠しのつもりで咄嗟にピースサインをする。
「サンキュ。いま送るな」
「あ、うんっ。ありがとっ」
仕事が速い。
送られた写真を見るように確認してきて、照れ臭そうにする俺と楽しそうにニカッと笑うアキのツーショット写真。
「写真撮るの上手だね」
「自撮りなんて普段してないぞ?」
「撮られる専門だもんね。そんな気がする」
「厭味だなーそれ」
「ごめんごめん」
「でも写真自体、本当は嫌いじゃないんだ。むしろ喜んで撮ってもらってたし。赤ん坊の頃からの写真が大量にデータとして残ってて親父もお袋もカメラが趣味でさ。俺の方が相当可愛いかったからって兄貴のよりもある」
「アキの赤ちゃんの頃かぁ…。まつ毛長いし、めちゃくちゃ可愛い気がする」
「そのせいで女の子扱いされてたからな。小さくても男のプライドがあって兄貴と並んで格闘技やったけど全然勝てなくて、ほかのスポーツやってもボコされるし、脚力は勝てたから飛び技ばっかりやってた。アクロバット、トリッキングって知ってるか?」
「トリッキングって何だろう…。初めて聞く」
「今度、見せてやるよ。俺の特技なんだ」
ニヤッと自慢げに笑うのが格好良いというより、なんだか可愛らしく思えてしまった。