第42章 モデル
「へえ…!ホームステイしてるんだ。すごいね!」
「うちん家はしてないけど、そこら辺に居住してる人達がいるからな。日本人はシャイで気軽に話しかけに行くと驚かれるけど色んなことが聞けて楽しいぞ」
「楽しそうだけど俺にはちょっと無理そうかな…」
「話し掛けやすそうな人なら誰でも良いんだ。その辺のじーちゃん、ばーちゃん、ちびっ子とか」
誰に対してもフレンドリーさを垣間見せ、これが誰からも愛される一つの理由なのかもしれない。
ショップで目当てのものを買い上げ、少し街をフラフラすることにした。
「家、何時まで大丈夫?」
「うーん。特に決まりはないけど」
「親父さんの帰りは遅いのか?」
「大体8時過ぎに帰ってくるかな。早いときは6時頃だったけど最近は遅い方が多いかも」
「じゃあいつも一人飯?」
「うん。料理作るの面白いし、まだ慣れてないからすごく時間掛かっちゃうけど」
「ふーん」
アキは料理をしているのだろうか。
お兄さんは何にもできないと言っていたから、本人は出来るようなニュアンスにも聞こえなくはないけど。
「今晩、なに作るか決まってるのか?実は俺も料理スキル上げてるんだ。大学行ったら一人暮らししたくてさ」
「えっ、もう進路決めてるの!?」
「会社名だけで決めたくないから言えないが、やりたいことは決まってる。なあ、さっそく今日ユウん家行ってもいい?一緒に飯作ろうぜ」
ニコッと笑ってグイグイ押され気味に話が進む。
今日すぐ家に来ることは問題ないけど、一緒に台所に立つとなると緊張してしまう。
というか高1で進路のこともう決めてるだなんて。
資格取得とか俺も少しは焦った方が良いのだろうか、混乱してきた。
「スーパー家の近く?」
「うん。家から少し遠回りになっちゃうけど」
「くく、なんかワクワクしてきた。友達ん家で料理作るのとかはじめて」
「俺もだよ。料理ができる高校生ってどうなんだろ」
「どうって男子厨房に入るべからずってか?そのうちブームが来るぞ。料理も育児も男がするものだって」
「だとしたらアキは最前線を走ってるね」
「まあ俺くらいの男になれば、女の仕事も男の仕事も関係なくなる。俺が最前線に立ったらできますやってますアピールじゃなくて、皮肉な"当たり前"や"普通"になっちまうけど」