第42章 モデル
はじめて降りた駅。
アキは街にあまり来たことない、郊外に住んでいるという割にはスタスタ歩いている。
「ここ来たことあるの?」
「ここから来るのは初めて」
「え」
「そんなに驚くことか?」
「いやだって…あの地図だけみて分かったの?」
「頭の中に地図入れたから大体はな。目てみて情報を上書きしてるけど、山手線全部言える?」
「全然分かんない…」
「その前に英語だな。今度タケたちも入れて山手線ゲームやろう」
「罰ゲームはなしでお願いします」
東京在住の子たちに勝てる気がしない。
自分の住所と郵便番号は見なくても書けるけど、自分の乗っている線路だって完璧じゃない。
「俺が絶対勝つから大丈夫」
「罰ゲームなしだよ?」
「嫌がるようなことはしない」
「それ罰ゲームなの?」
「罰って恥ずかしいことさせることだろ?だから大丈夫」
「うう~…そう言われちゃうと負け確だよ」
「俺らより在住長い人だって苦手な人はいる。それにいざやるとパニックたり、ど忘れしたり、単語が被って大慌て。俺は常に筋トレしたり走ったりしてる時も全く関係ないこと考えてる。税理士の資格が欲しくて法律学や税法の叩き込んだこと復唱したり、ITサービス系も強くなりたいし、気分転換に曲、ヘチマの成長とか色々」
「ヘチマ…」
ヘチマに全部持っていかれた。
何だか高難易度な資格試験をしているようだ。
とてもじゃないが見本に出来そうにない。
「クイズ番組とか出れそうだね」
「その前にのど自慢大会だな。歌うならそうだな…。平成映画の名曲、あっちも捨てがたいが■■にしようかな!出場理由も考えないとだし」
「アキのお母さんカラオケ好きって言ってたよね。アキも普段歌ってるの?」
「歌うのも体動かすのも好きだからな。お袋の実家に帰ったら毎回知らずに踊ってる」
「どういうこと?」
「お袋の実家が和歌山にあってミカン農業と道場を開いてるんだ。お袋の弟の剣人さんがホームステイやってて、嫁さんがアメリカ系メキシコ人で本当ウチより賑やかな所でさ」