第42章 モデル
なにかの勧誘だろうか。
赤ちゃんや母親の時とは打って変わって、冷たい態度を取っている。
「行くぞユウ」
「君、ユウくんって言うんだ。初めまして~。僕は雑誌Q-BOYSのスカウトマンやってます小野寺って言います。よろしくね~」
「あっ、え。Q-BOYSの!?」
嘘でしょ。
こんな所でQ-BOYSの関係者に会うなんて。
東京すごい。
津梅さんもスカウトマンから声を掛けられたってインタビューでも答えてたし、これってまさか。
「あ。知ってる感じ?もしかして買ってくれちゃったりしてる?」
「おい。ユウ…」
「はいっ!毎月買ってます!Q-BOYSって、あの、津梅剣くんが所属してるところですよね。俺、ファンなんですっ!!」
「おっ!ツヴァイケン知ってる?今日ちょうど近くで撮影してるからサイン貰えるかも!牛垣くんが来てくれたら僕が話しつけて会わせてあげるけどな~」
「…近くで撮影…」
本物が見られる。
間近で、今まで雑誌でしか見たことなかったけど。
「あ…でも、そっか。…アキは…」
面倒臭いのに絡まれるから近隣で済ませていると言っていた。
つまりそういうことだ。
アキは、芸能界に全く興味がない。
「み、見に行くくらいなら…」
「えっ、いいの!?」
「言っときますけどあの話し、呑んだワケじゃないですからね。俺、部活やってて他にも色々やりたいことありますし、仕事できる時間は…」
「へえ~!部活やってるんだ。とりあえず歩きながら話そ。あ。その前にちょっと向こうに電話させてね~」
小野寺さんか連絡を取っている最中、バツの悪い顔で首の後ろに手をやるアキの姿。
もしかして俺のため?
嫌々にみえたけどそれを誤魔化すみたいに笑みを向けられる。
「どんな風に撮影してるのか気になってたし、一人じゃ心細かったけど一緒にいいか?」
「う、うんっ!ありがとっ」
「お待たせー。OKみたいだから行こっか」
「お願いしますっ!」
アキには素直に感謝しよう。
会いたい。
キラキラして格好良いツヴァイケンに。
もう少ししたら間近で会えるんだっ!!