第42章 モデル
「そんなに見詰めてどうした?」
「あっ、ええっと…その、いつもこんな感じなのかなって」
後ろに座っている時も、話している時も、一緒に廊下を歩いてる時もチラチラとさり気ない視線を向けてくる生徒達。
女の先生だってワントーン上がっていた。
むしろ性別問わず男子生徒からも無意識に目で追ったりしている傾向もあり、イケメンという要素だけでなく、美人さもあるから誰もが羨望して追い掛けている。
「いつもって?」
「えっと、その視線っていうか注目っていうか…学校来るときとか大変じゃない?」
「まあ…慣れだな。勝手に写真撮られるのは勘弁だけど」
「えっ…写真?大丈夫?」
「心配してくれてありがとな。許可なく勝手に撮ってコレクションしてるんなら肖像権侵害の問題。民事での不法行為で訴えたとしても請求するより調べて訴えた方が高い。ネットに勝手に晒されてもプライバシー侵害で訴えることはできないし、そもそも拡散されれば個人を特定するのは難しい。相手が直接なにかをして来ない限り大きな金額は期待できない。──とは言うけど、ほとんど相手は無意識なんだろうな。さすがに家にまで付き纏って来るなら非常識だし、まず親に相談して警察行くけどな」
「いろいろ難しいんだね…」
綺麗なものをみたら写真に収めたくなる心理。
法まで口にするアキの過去に何かあったようだ。
ない方が違和感がある。
モテる人にしか分からない大変さ。
ただ周りから可愛がられるだけなら良いものの、人知を超えれば不快感を与えてしまう。
(俺も…見過ぎには注意しないと)
女子がいう目の保養というのはよく理解できる。
俺もファッション雑誌の津梅剣が好きで毎月雑誌を買って、オシャレや考え方を学んだり、目の保養を実際している訳だし。
「あ。電車来たな」
「うん」
到着した電車から降りる人を待ち、電車内に乗り込むと後ろから赤ちゃんのような子供の声が聞こえる。
迷惑が掛からないように最後尾から乗り込んだようだが、抱っこにベビーカー、背中には大きなリュックを抱えている子連れのお母さんが乗ってきたようだった。