第42章 モデル
3回目の英語の授業。
英語だけ理解が追い付かない焦りが出てきた。
(ダメだ。もうなにをどうして良いのか分かんないっっ)
通信の先生にも英語はギリギリだと言われた。
ほか四教科はなんとかなったけど、英語だけが基準値に満たすか満たさないかのギリギリ。
どうして受験に合格したのか不思議なくらいだ。
アルファベットをみた瞬間、脳が受け付けない。
まさしくそんな感じ。
「う~…」
「ん?どうした?腹イタか?」
「ううん。英語が…」
どうやら声には出なかったけど空気が出てしまっていた。
前に座っていたアキが心配そうな顔して覗いてくる。
視線を落とすなり、発音ばかり書いた教科書をみて指でなぞってニヤリと笑う。
「めっちゃ読み仮名付けてる。読むのも話すのも聞くのも書くのも苦手?」
「うーん…。たぶん全部死んでる。今まで単語暗記で乗り切ってたんだけど…進学した高校間違ったかも」
「ただの暗記じゃツライだけだろ。音楽とか好きか?ロックとか、J-POPとか…聴く?」
「うん。英語で何言ってるか分からないけどリズム感があるロックバンドとか、けっこう好き」
「そっか。なら耳は肥えてるんだな」
「ええっ!?そんなっ、肥えってるってほどじゃないよ!?たまに聞くくらいで…、えっと」
「空耳くらいが丁度良いんだ。俺が楽しい授業にしてやる。洋画とかも好き?」
「う、うんっ」
ここは日本で英語なんてなくてもやっていける。
だけど授業に置いていかれたくない。
赤点とって留年なんて笑えない。
するとアキが耳障りのよい低い声で希望の光を見せてくれた。
俺なんかのために…。
「今日、学校終わったら二人で遊びに行かないか?」
「ふへっ?!」
「ん?」
「うっ、ううん、行きたい!勉強…教えてくださいっ」
今日は部活が休みとのことで街まで一緒に行くことになった。
部活帰りに誰かと遊びに行ったと思ったが、高校の友達と行くのは今日が初めてらしい。
ホームについて電車を待っているだけでも、アキは人の視線を集めている。
アキはどの人から見てもオーラがあるんだ。