第42章 モデル
アキの説明に竹ちゃんは納得できない様子だったが、こだわることなく会話が続く。
「なんつーかさ、はじめてアキという人間に出会って、オーラのようなエネルギーがあるなと感じたな」
「だとしても、よく物怖じせず近付いてこれたな」
「それ悪口?」
「むしろ褒めてる」
「普通ならビビっちまいそうなところ、こうグッと引き寄せられたんだよ。理由は考えれば考えるほどよく分かんねーんだけど、本能的なものが呼んでいた気がする」
竹ちゃんが感じるアキのエネルギー。
アキの姿勢や外見で身勝手にイメージを作り出しているだけかもしれない。
この人はすごい。
次元が違う。
天才。
アキは初日からそれらを魅せつけてきた。
だから後ろ姿でもオーラがあると錯覚してしまうのか。
「そう本能が示したんなら俺は受け止めてやるだけさ。俺としても竹ちゃんは良き友達だ」
「お、おう」
「急に照れんなよ。お前から友達になりたいって言ったんだぞ」
「改めて言われると嬉しいんだよ。学校はじまって7日も経ってねぇのに皆と親しくしゃべってるから…」
「人覚えが早いだけだ。それにしても嫉妬だらけだな。竹ちゃん」
「っ~、それは自覚してる!!大ちゃんにお前それはマジでやばいぞって、マジな目ぇして言われたから!!」
「大ちゃんが諭してくれなかったら今頃、喰われてたな」
「喰わねぇよ!!誤解しないでくれる?!」
「俺は性に寛容なんだ」
「だから違ぇって!!」
全力で否定している竹ちゃん。
オープンに茶化すアキ。
竹ちゃんが本気で引っ込みがつかなくなる前にアキの方から話題を変え、上手い具合に話を盛り上げている。
(傍に、いても良いのかな…)
大丈夫だと、俺を元気づけてくれた。
器量が大きいだけじゃなく、思いやりがあるからアキはいつだって気遣いを欠かさない。
また、逃げたくなってしまったらどうしたら良いのか。
自分を信じられなくなったらアキを信じよう。
依存は良くないって知ってるけど、15歳の俺を守りたいから、この世界にいる自分を嫌いになってしまう前に。
消えてしまいたくなる前に。
同じようになりたくないから、自分ひとりで立って歩けるようになるために後ろから見ていよう。