第39章 フラット *
CAで撮った写真はとても活き活きしたものだった。
映画では終始険しい顔をしていた囚人達の楽しそうな様子やケンジを犯した黒人やコーギー、そのほか兄役のジェイク、イキッた白人、看守、ラティーノ、女優のメリッサやN.N.との仲の良いツーショット写真まである。
本編では関わらなかったショーやカイマン、ラッシュの写真もあり、主任のコミュニケーションの高さの賜物だろう。
特に仲が良かったオルフェ、次いでミックの多さが目立っていた。
「ハリウッドの撮影中ってどこで寝泊まりしてたんですか?」
「基本トレーラーだな。場所を知られたらマズいし。この辺の写真とかトレーラーの中で撮ったやつだ。あとは囚人の過酷な生活を体験する目的でセットの監房で何回か寝たな。
撮影中は遊ぶ時間なんてなくて、大学の単位もあったからハードスケジュールだったよ。A評価は絶対だったし、次席で卒業してやったけどな」
「流石です。監房って肩凝りそうですね」
「あれは休めた感じはしなかったが修学旅行みたいで楽しかったぞ」
「トレーラー内は居心地は良かったんですか?ベッドの拘りはあるでしょうし…」
「やっぱり家が一番だが主役だったからトレーラーは豪華だったな。撮影終わってから毎回オルフェが遊びに来て、完全に俺のトレーラーに居座って一人で寝た時間が少なかった気がする」
ゲイで惚れたと告白されて、主任の頭はどんだけ緩いんだ。
一緒に寝てたって仲の良さにも程がある。
あのやおい色全開のフォトブックは仲の良さというより最早、リアルそのものと解釈して良いのかもしれない。
「あ。この写真は?」
「これはオルフェのコネでMARSOCのユニフォームとボディーアーマーを着用させてもらった時の写真。その時にはじめて実銃を握って手が震えた。
オルファもそうだけどうちの兄貴も半端なく格好良いと思い直した瞬間だった」
主任はテレビじゃ言えない話をたくさん教えてくれ、引っ越しの作業はまるで進まなかったのであった。