第39章 フラット *

恋人同士になって元カノの話をされるのは面白くないが、どうやって交わしたのか気になる所であり、主任に続けて話してもらうようお願いした。



「報道されたのが五人。全員愛人やセフレの類ではなく世間でいう"恋人"として付き合ってた。
ポリアモリーなんて言われたけど俺は実際、そうは思ってない。"恋"がしたかったからそういう付き合い方をした。幻滅するような理屈だ。ひどいだろ？」

「アキさんは今まで、恋…したことなかったんですか？」

「まあな。恋は出来ないのに性欲旺盛で参ったよ。普通に一人と付き合ったら盛り殺す気がして、力配分してた。……最低だろ」

「それでも流出写真とか出なかったのってイメージダウンを避けるため、事務所が守ってくれたんですか？」



他の俳優との違い。
なぜあんな自由恋愛を晒しておいて干されなかったのか。



「それも多少あるが女は忠誠心が第一って言ったろ。本人が確りしてても周りが裏切る可能性もあるし、付き合う前提でそれだけは気を付けていた。
リアル情事は最低限が必須。デートは普通のカップルみたいに堂々と。自分のテリトリーは踏み込ませず、ホテルか彼女ん家で抱く。付き合ってるなら朝帰りなんて普通だろ？連日で別の彼女ん家に泊まったら下半身事情の妄想書かれて、正しくその通りだって笑ったけどな」

「確かに。アキさんの絶倫を知ってしまった身として擁護できない案件です…」

「結局のところ事務所に相談しまくって納得させたことにあると思ってる。謙虚に円満に。でなきゃ金で売られて島流し。
事務所にはこうは言ってないけど誰か一人と付き合っても複数と付き合ってもイメージダウンは避けられないし、新たな風潮が広まるんじゃないかってメディア戦略することにした。悪代官っぽいことしたけど結果的に成功したし、散々当たり前のことを言われたが仕事に繋がった。最後まで商品として大切にされていた。関係者にはかなり迷惑を掛けたがな」



選んだ事務所が良かったからこそ横行ともいえる主任の我儘な自由恋愛が認められた。

引退してもなお、持ち上がらないのは彼女たちを大切にし、平等に愛したからこそ綺麗さっぱり清算されたのだろう。