第39章 フラット *
それからユイちゃんの父親が見つかるまで主任は嫌な顔せず、進んで面倒を見ている。
「この髪型、パパにやってもらったの?」
「ママ!」
「ママにやってもらったのか。上手にできてるね。ユイちゃんにすごく似合ってる」
「んふふふっ。にあってるでしょー?」
「似合ってる。すっごく可愛いよ。ユイちゃんはママとパパの三人で温泉にきたの?」
「ううん。ママはびょーいんでおるすばんしてるの」
「ママは病院にいるのか。そしたらパパ、困った顔してなかった?」
「こまったかおしてたっ!ユイのごはんどーしよう。おようふくどーしよう。どーしょどーしょいっぱい言ってた」
「そっか。それでユイちゃん、ひとりでお風呂に入れるってパパに言ったの?」
「うん。そしたらパパそっかっていってどっかきえた」
言葉の意思疎通はほとんど問題なくできている。
ユイちゃんは文字通り確りしているとみて父親は一人にしてしまったのだろう。
その後、一緒に頭を洗っていると父親の姿がようやく姿をみせた。
うちの娘に何するんだという失礼な態度をとってきたが、ユイちゃんに上から叱られると状況を把握した父親は頭を下げて謝った。
「いやー本当にすみません。一人はマズかったですよね。子供の言葉を信じ過ぎました」
「信じるのは悪いことではありませんが目を離さないのがユイちゃんの為です。溺れたり転んで怪我したり万が一のこともありますから」
「はい、そうですね。本当に失礼しました」
「パパだめでしょ。パパ、まいごになってユイ、たいへんだったんだから。けーさつよぶよ?」
「け、警察?」
「ユイちゃん、本当に確りしてますね。将来が楽しみになります」
「あはは。ホントそうですね。パパ、警察に呼ばれないよう気を付けないとね」
無事ユイちゃんを父親の元に返すことができ、俺は見ていただけだったが任務を達成した気分になった。