第38章 轍 *
美味しそうに湯気が立ち昇ったラーメンが運ばれ、割り箸を割り、麵を少しずつ口に入れて啜る。
「うどんの時も思ったんだが湊は音を立てず麺を食べるんだな」
「っえ…?」
「ああいや、とある番組に出させてもらった時、ラーメンの食べ方で叩かれたんだよ。それから気にして見るようになったんだけどな。下品に食べてるつもりはなかったのに無音なのが気に食わないらしくて、ズズッと啜れよって言われたどうでも良い話」
突然そんなことを言い始め、キョトンとした俺の反応を見みてどうでも良い話と流そうとする牛垣主任。
「好きに食べればいいと思うんですけど、やらされたんですか?」
「その時は出来なかったんだけどな。それじゃあ麺類のCM来ないね~とかいらんこと言われて、家帰ってユウに付き合ってもらってズズッと食べ方を練習したりしたんだ。リベンジする機会があっていい音で食べるね~!ってすげー褒められたけど、俺的には逆にすげー変な気分になった」
「ふふ。だから今はもう戻ってるんですね」
「そうそう。啜る効果はあるらしいけど無理して食べるもんじゃないよな。不快に思うなら一緒に食べなきゃいい。クチャラー、箸の使い方とかは嫌でも目に付くけどな」
「それは分かります。口に食べ物が入ったまま話されるの見てたら嫌な気分になります」
思わず目に入った瞬間、気になっている人が残念な食べ方をしていたら幻滅傾向が激しくなる。
だからといって自分が完璧であるかは正直自信がない。
完全なテーブルマナーは知らないけど、牛垣主任の食べ方についてはお上品だと思った。
「湊と食べ方の感性が似たようで良かった。よし。今度カレー屋さん行くか」
「俺なにか試されてるんですか?」
「いーや?特に理由はないがなぁ」
「嘘です、絶対なにか企んでますよね」
カレーまで食べ方があるのだろうか。
だとしたらご飯にかけるとか混ぜるとかそんな感じだろうか。