第37章 惑溺
毎日仕事ばかりで見向きもせず、理解してくれない両親。
関係を持ったものの弄び裏切ったロクでもない竿達。
主任は未遂で、しかもあんな正気じゃない状態だったから含みやしないけど。
「海外?同性婚したいの?」
「そういう相手を見つけたくて今は貯蓄を蓄えてるところ。親は仕事人間でほぼ絶縁状態。少しでも返してから行こうと思ってね」
「真面目かよ。無関心ならほっときゃ良くね?」
「親不孝な息子だから自分が少しでも気楽になりたいんだ。お金でしか返す方法が分からない」
言葉を放っても聞いてくれない。
見向きもされない。
だから期待することを諦めた。
自分から家を離れて楽になった。
両親と決別して他人の愛情を切に願った。
それが海外。
「海外に行くのが俺の夢。そこにきっとあるはずだから…」
日本に比べて同性愛者に寛容な国がある。
そこへ行けば見つけやすいと思った。
日本でもコミュニティ場があるが風当たりが強いと聞く。
もう二度と裏切られない俺だけを見てくれる恋人と出会いたい。
「その言い方だと特別海外に憧れて行くわけじゃない解釈であってる?」
「そうだね。大きな目的は環境の変化にある」
「アジアじゃないよな。黒人?白人?なんか決めてることあるでしょ?」
「最初から留まらないで何か国か行ってみようとは思ってる。顔の造りとか筋肉量とか外国人って格好良いよね」
「それは分かるっ!すごい筋肉みると触りたくなるよな!アスリートもすごいけど軍人はもっとすごかった」
「カメラマンは顔が広い仕事だからね」
「その人は仕事っつーか武明の知り合いでさ。あいつの家族と俺と兄貴の5人でビーチに遊びに行ったんだ。テレビで顔は知ってたけど、武明と同じでなんでテレビから姿消したんだろうって思ったけどな」