第37章 惑溺
赤司くんは主任のSOSメールに気付き、警察を手配した張本人。
それから長瀬との関係を深く聞いていいと思ったのか、ズバッとジャックナイフを振り翳してくる。
主任の暴力を振るった長瀬を許さないと荒い言葉を使い、少し話して落ち着いたようにも見えたが今もなお、ムシャムシャしている態度を見せていた。
「ワリと最近まで付き合ってたんだ。ショック?」
別れて半年も経っていない元カレが男に暴力を振るって逮捕。
赤司くんは際どい所を攻め続ける。
「話したくなかったら別にいいけど。俺あいつのこと一生許す気ねぇし」
「主任のこと大切に思ってるんだね」
「別に…。あの野郎、兄貴には黙っててくれって意味分かんねぇだろ?俺はいいって巻き込みやがるしホントいい迷惑。湊さんはあいつのこと弁護すんの?それとも見捨てる?」
「助ける理由がない。好きになって付き合って別れて苦しかった時期もあったけど、しっかり反省すべきだと思う。あれは、病的所業だ」
薄情かも知れないが、付き合う前から長瀬が偽りで接してと思えばスッと気持ちの整理ができた。
長瀬に感謝することは山ほどあるが恩返しをはき違え、優しい手を差し伸べるつもりは毛頭ない。
他人を傷つけ裏切った。
それ相応の報いを受けるべきだ。
「それで、刑期ってどうなるのかな…。赤司くん聞いてる?」
「ムズカシイ話はよく分かんねぇけどおっさんが言うには、きょーせい性交等罪で5年以上の有期懲役って話し。でもなんか執行猶予付きになるだろうって。死刑で良いじゃん」
「死刑は極端だけど…そっか……。執行猶予…」
「世の中の警察も甘いよな。性犯罪者その辺にのさばらしていいのかよ。やり直すチャンスなんて与える価値もねぇ。そう思わねぇ?」
「失うものは少なからずある。長瀬のお父さんは厳しい人だから…」
「チィッ、一歩間違ってたら死んでたかも知んねぇんだぞ!?お前それ分かってて言ってんのかよ!!アンタにしたらただの上司かも知んねぇ…。けど、あいつ……すげぇ震えて…っ…」